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エルシニア・エンテロコリチカの生育条件, 症状, 食中毒予防法など

冷蔵庫でも繁殖するエルシニアについて、食中毒予防の観点からまとめました。低温調理/真空調理する人に向けて詳細な死滅条件(D-値)も記載。

出典: 国立感染症研究所, エルシニア感染症
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概要

Yersinia 属菌のうち食中毒の原因となるエルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、エルシニア・シュードツベルクローシス(Yersinia pseudotuberculosis)について記載する。ブタ・イヌ・ネコなどが保菌し、それらの動物との接触などや糞便汚染などを介してヒトに感染する。特に、冷蔵庫などの冷温環境でも繁殖し、そのスピードはリステリア・モノサイトゲネスなどよりもかなり早い。芽胞を形成しないため加熱によって死滅する。

生育条件

発育温度:-1.3~42℃
生育最低水分活性:0.945
ph:4.2~10
塩分濃度上限:7%
(以上[4])

25℃の培養では耐熱性のエンテロトキシン(毒素)を算出するが、4℃では産出しないか、したとしてもマウスにとってすら問題とならない量に留まる。

[5]によれば、5℃において5日間で10/ml→\(2.8 \times 10^7\)/mlに増える。これは平均すると2時間半ごとに分裂する計算。

[3]によれば、30度では34分、22度では1時間、7度では5時間で分裂する。

D-値(7D-reduction)

scald tank water in a pork slaughter plant([7])
50度45.9分(5時間22分)
55度11分(1時間17分)
60度2.5分(17.5分)

z-値: 7.8

牛乳([6])
57.2度14.7分(1時間43分)
62.8度0.96分(6分44秒)
68.3度0.09分(38秒)
z-値: 5.11

汚染経路

保菌動物との接触、またはその糞便を介して食品が汚染される。
保菌動物の代表例は、ブタ・イヌ・ネコ・ネズミ。
典型的には、ブタのと殺段階で食肉部が汚染を受けると考えられる。

症状

エルシニア・エンテロコリチカの場合、腹痛・下痢・嘔吐などの胃腸炎症状と発熱・頭痛などのかぜのような症状。

エルシニア・シュードツベルクローシスの場合、上記胃腸炎症状の他に発疹などの様々な全身症状を呈す。幼児の場合は川崎病の診断基準と類似した症状を呈することがあり、エルシニア・シュードツベルクローシスと川崎病の関連が指摘されている。

最小発症菌数

詳細は不明。1万-100万と推定されている。([3])

食中毒予防策

  • 食品の十分な加熱
  • 冷蔵保存を過信しないこと
  • ペットの糞便の衛生的な処理
  • 動物と接触した後の手洗いの徹底
  • 未消毒の牛乳などを飲まないこと

検出状況

部位によって検出率が異なるものの、豚肉からの検出が認められている。確認できている限りで豚タンで50%以上の検出をした例がある。([1])

日本語文献で網羅的なリストがないように思ったので作りました。代表的な食中毒細菌・寄生虫の生息環境...
食中毒を起こす細菌・寄生虫・ウイルス23種情報まとめ - Theory is the best sauce.
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参考文献

[1]エルシニアによる集団感染事例と豚肉からのエルシニア検出状況, 東京都感染症情報センター
[2]国立感染症研究所

[3]Yersinia enterocolitica. Bad Bug Book, Foodborne Pathogenic Microorganisms and Natural Toxins Handbook. FDA.
[4]Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food: Draft Guidance for Industry. U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Food Safety and Applied Nutrition, 2016.
[5]Behavior of Yersinia enterocolitica in Foods. Md. Latiful Bari, M. Anwar Hossain, Kenji Isshiki, and Dike Ukuku. Journal of Pathogens, vol. 2011, Article ID 420732, 13 pages, 2011. doi:10.4061/2011/420732.
[6]Thermal Inactivation of Yersinia enterocolitica in Milk
JOSEPH LOVETT, JOE G. BRADSHAW, AND JAMES T. PEELER. APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY, Vol. 44, No. 2, Aug. 1982, p. 517-519, 0099-2240/82/080517-03$02.00/0.
[7]Thermal inactivation of Yersinia enterocolitica in pork slaughter plant scald tank water. Bolton DJ, Ivory C, McDowell D. Meat Science Volume 95, Issue 3, November 2013, Pages 668-671.

Nick

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Nick
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