セレウス菌(Bacillus cereus)
土壌細菌として自然界に広く分布するセレウス菌について、食中毒予防の観点から情報をまとめました。また、低温調理/真空調理をする人に向けて詳細な死滅温度(D-値)も紹介します。
スポンサーリンク概要
土壌や河川水など自然界に広く存在し、農畜産物などを汚染している。
食中毒事故全体のうち、セレウス菌によるものは1%程度。下痢型と嘔吐型があるが、日本では嘔吐型が大部分を占める。
セレウス菌が形成する芽胞と、嘔吐型毒素は高い耐熱性を有するため、調理後の食品を常温に長時間置かないことが有効な予防策となる。
生育条件
発育温度:4~53度
生育最低水分活性:0.92
ph:4.3~9.3
塩分濃度上限:10%
D-値(7D-reduction)
pork luncheon roll
増殖型
50度:33.2分(3時間33分)
60度:1分(7分)
Z-値 6.6℃
芽胞型
85度:32.1分(3時間45分)
95度:2分(14分)
Z-値 8.5℃
D-値が初耳の人はこちらをどうぞ。
汚染経路
省略。
症状
下痢型は、ウェルシュ菌食中毒の症状に似ており、腹痛・下痢を起こす。潜伏期間は8~16時間。
他方、嘔吐型は30分~6時間の潜伏期間で、吐き気や嘔吐を伴う。この症状は、黄色ブドウ球菌食中毒に似る。
食中毒発生のメカニズム
下痢型は、芽胞形成などにより不活化していないセレウス菌が腸管に達することで、小腸内で下痢毒を産出されることによる。
他方、嘔吐型は、食品が長時間室温で放置されることで菌の増殖が起き、その際に産出された嘔吐毒を摂取することで起きる。この嘔吐毒は120度×15分の熱に耐える。
最小発症菌数
下痢型、嘔吐型いずれも10万~1億/1g
食中毒予防策
・汚染が疑われる食品を長時間室温で放置しないこと
・調理後は小分けにして急冷し、低温保存すること
参考文献
[1]Cooking for Geeks: Real Science, Great Cooks, and Good Food. 2nd edition. Jeff Potter. O’Reilly Media, 2015.
[2]国立感染症研究所
[3]東京都福祉保健局
[4]wikipedia
[5]Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food: Draft Guidance for Industry. U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Food Safety and Applied Nutrition, 2016.
[6]Thermal inactivation of Bacillus cereus and Clostridium perfringens vegetative cells and spores in pork luncheon roll. Food Microbiolgy. 2006 Dec;23(8):803-8. Byrne. B, Dunne. G, Bolton. DJ.