腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic Escherichia coli)

O157で有名な腸管出血性大腸菌について、食中毒予防の観点から情報をまとめました。また、低温調理/真空調理をする人に向けて詳細な死滅温度(D-値)も紹介します。

O157:H7. 出典:国立感染症研究所, 腸管出血性大腸菌感染症とは
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概要

約170種ある病原性大腸菌のうち、ベロ毒素と呼ばれる毒素を産出するものを腸管出血性大腸菌と呼ぶ。代表的なものに、O26、O111、 O157などがある。これら3種で腸管出血性大腸菌が原因の食中毒の8割~9割を占める。哺乳類や鳥類の腸管に存在する。極めて少ない菌数で発症する。加熱によって殺菌が可能。

生育条件

(病原性大腸菌の場合)
発育温度:6.5~49.4度
生育最低水分活性:0.95
ph:4.4~9
塩分濃度上限:?%

D-値(7D-reduction)

O157:H7型に対する加熱減菌の方法は、(その他の腸管出血性大腸菌である)O26:H11, O45:H2, O103:H2, O104:H4, O111:H⁻, O121:H19, O145:NM に対しても同様に有効と示唆されているので([4])、ここではO157:H7のD-値のみ記載する。

[3]
牛挽肉
55度:21.4分(2時間30分)
57.5度:5.2分(37分)
60度:201秒(24分)
62.5度:57秒(6分39秒)
65度:24秒(2分48秒)

Z-値 6.8度

鶏挽肉
55度:12分(1時間24分)
57.5度:231秒(27分)
60度:98秒(11分26秒)
62.5度:54秒(6分18秒)
65度:24秒(2分48秒)

D-値が初耳の人はこちらをどうぞ。

汚染経路

主に、保菌動物のと殺時に食肉部が汚染される。
(と畜場に搬入された牛の10%以上がO157を保菌する。)

症状

無症状の場合もあるが、有症の場合は3〜5日の潜伏期後、激しい腹痛・水のような便・血便を起こす。有症者の6~7%は、上記症状発生から2週間以内に溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome, HUS)、または脳症などの重篤な合併症が起こる。HUSを発症した患者の致死率は1~5%。

食中毒発生のメカニズム

汚染された食品を傾向摂取することによる腸管感染。

最小発症菌数

50~100

食中毒予防策

・十分な加熱
・二次汚染の防止

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参考文献

[1]国立感染症研究所
[2]食品健康影響評価のためのリスクプロファイル ~牛肉を主とする食肉中の腸管出血性大腸菌~, 食品安全委員会. 2010.
[3]Thermal destruction of Escherichia coli O157:H7 in beef and chicken: determination of D- and z-values. Juneja VK, Snyder OP Jr, Marmer BS.
Int J Food Microbiol. 1997 Apr 15;35(3):231-7.
[4]Thermal inactivation of a single strain each of serotype O26:H11, O45:H2, O103:H2, O104:H4, O111:H⁻, O121:H19, O145:NM, and O157:H7 cells of Shiga toxin-producing Escherichia coli in wafers of ground beef. J. B. LUCHANSKY, A. C. S. PORTO-FETT, B. A. SHOYER, J. PHILLIPS, D. EBLEN, P. EVANS, and N. BAUER. Journal of Food Protection: August 2013, Vol. 76, No. 8, pp. 1434-1437.
[5]Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food: Draft Guidance for Industry. U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Food Safety and Applied Nutrition, 2016.


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