卵をAnovaに沈めると、何分後に卵全体が水温と等しくなるのか調べてみました。
結論
卵を袋などに包まずに直接恒温水槽に投入した場合、黄身が水温と等しくなり始めるのは55分後で、1時間で黄身全体が水温と等しくなるものと推定。
鶏卵内部に0.0029%の確率で存在し得るサルモネラ菌、特にSalmonella Enteritidisが、もし運悪く自分の手元に来てしまっていても、自分の温泉卵のレシピで理屈の上で安全に減菌できているのか? と疑問に思ったことが事の始まりでした。特に、一度でも卵由来の食中毒を経験された方にとっては、大きな関心ごとでしょう。 1)なお、小さな子どもの卵アレルギーは温泉卵を作るときのような低温では防げません。
この問に答えるには、anovaでの加熱過程において、卵の中心温度がいつ加熱温度(63℃とか66℃とかAnovaの水温)に達するのかを知れれば十分です。そこから、レシピの殺菌強度を下から(控えめに)評価することができ、レシピの安全性を確かめることができるからです。
ちなみに食材全体が水温と概ね等しくなるまでの時間について推定値がありますが(以下参照)、この推定値の算出過程において卵の熱伝導などは考慮に入れられていないので、同推定値が卵に対しても妥当するかは不明です。
真空調理を行う食材の中心温度が目標温度に達するまでに何分かかるか? その推定値を提供します。sous v... 低温調理/真空調理した食材が目標温度に達するまでの時間の推定 - Theory is the best sauce. |
よって、強引に調べてみます。
卵の重要温度クイック・リファレンスに書いた通り、黄身は65度くらいから一気に粘り気が強くなり、箸で割っても黄身が流れ出ないようになります。
この性質を利用して、
卵は「森のたまご」にしました。(以下の内容は「さくらたまご」でも同様に成り立ちます。)以降、「森たま」という我が家の愛称を使います。
森たまの場合、\(T_{\text{set}}=64\) と荒く推定しました。
その根拠は、以下の加熱結果によります。
63度90分→固まらない (サンプル数30以上)
64度90分→固まる (サンプル数10)
あとは数作って確かめます。
64度35分→固まらない (サンプル数5)
64度40分→固まらない (サンプル数5)
64度45分→固まらない (サンプル数5)
64度50分→固まらない (サンプル数5)
64度55分→固まり始め!!! (サンプル数10以上)
64度60分→固まった (サンプル数5)
64度55分については、現在進行系でサンプル数は増えていますが未だに反証されていません。
卵を恒温水槽に直接投入した場合、黄身が水温と等しくなり始めるのは55分後で、1時間で黄身全体が水温と等しくなる。
ただし、
Anovaの温度計の測定誤差
森たまが\(T_{\text{set}}=63.1\)などである可能性
の2つは排除できない。
「昔の味が蘇った美味地鶏卵」(以下「むかたま」)でも同様の手順を試しました。
という結果から、むかたまについても\(T_{\text{set}}=64\)と荒く推定。その後、さらに続けると
という結果が出ています。
したがって、むかたまの黄身は、たとえば\(T_{\text{set}}=63.1\)など63度寄りの凝固温度を持ち、森たまはそれよりも64度よりの凝固開始温度を持っていることが推測されます。森たまについて\(T_{\text{set}}=64\)とした初めの推定が、それほど荒唐無稽なものではなことを示唆する情報として記しておきます。
ひとまず当初の目的を達するには十分な情報が得られた上、私は森たま愛用者なので、これ以上他の銘柄の卵で実験することはやめておきます。
他の卵ではどうなんでしょう??
興味があれば、ここでの結果を参考に自分で確かめてみてはいかがでしょう??
その折は是非私に結果を教えてください。笑
Enjoy sous vide!
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