加熱温度と食材の中心温度は全く別物であるため、Anovaで調理中の食材の中心温度が、”いつ”、”何度か”は、実際に測ってみなければわかりません。
というわけで、実際に測ってみました。
60℃×1時間、55℃×1時間など色々なAnovaによる加熱パターンがレシピとして公開されていますが、その安全性の検証データは公開されていません。食材の加熱時間と中心温度を混合してしまっているものさえあります(嫌味ったらしいのでリンクは張りません)。大半のレシピは、実食した際の食感などで火が入っているどうかを確認している、というのが現状と思われます。
そこで、それらのレシピの加熱を実施した際に中心温度がどのように推移し、結果としてどの程度の殺菌が達成されるのかを算出し、レシピの安全性を評価してみたいと思います。
殺菌レベルの算出にはD-値を使います。なにそれ?って方は以下の記事をどうぞ(この記事ではまだ計算はしませんが)。
D-値の知識なしに低温調理を行うことは、毒キノコの知識なしにキノコ狩りに行くようなものです。あなた... 【Anova】D値: 真空調理/低温調理の食中毒予防のための知識 - Theory is the best sauce. |
(こっちはおまけです。)表面が温まるタイミングと中心部分が温まるタイミングは当然ながらズレがあります。そのズレを上手に利用すれば、中心付近と表面近くの火入れの程度を意図的に操作することもできるはずです。そのためには外部水温に対して、中心温度がどの程度素早く反応するかどうかは重要な要素です。欲を言えば、表面近くの温度と同時に中心温度の観測もできればよいのですが、ひとまず実験的に中心温度の方を見てみたいと思います。
鶏胸肉:350g, 厚み3.5cm
Anovaで63℃のお湯を張り、ポリ袋に入れた鶏胸肉を1時間加熱する。
使用した袋は0.025m厚の高密度ポリエチレン製のもの(ワタナベ工業OP-25)。
ポリ袋内には5gのオリーブオイルも加え、鶏胸肉にドレスさせておく。
肉の中心に温度計を差し、その値をモニタリング、1分・1℃単位でログをとる。
事前にAnovaで用意した63℃の恒温水槽にポリ袋を沈め、WDMによってポリ袋内の空気を抜き、計測を開始する。(念のため80分のログを取る。)
ポリ袋を沈めた際に水温が約3分間、最大で0.3℃低下したが、この温度変化は微小と見なして無視する。
中心温度の推移は次のグラフのようになります。
一部の値を抜粋すると
加熱開始
32分後に50℃
34分後に51℃
35分後に52℃
37分後に53℃
38分後に54℃
40分後に55℃
42分後に56℃
45分後に57℃
47分後に58℃
51分後に59℃
55分後に60℃
60分後に61℃
66分後に62℃
78分後に63℃
に到達。
1時間経過しても中心温度は63℃に到達していません。同様のことが鶏胸肉に限らず厚みのある他の食材でも起こります。
鶏胸肉が、”いつ”、”何度か”わかりました。
食中毒原因菌のD-値は既に調査済なので、これらを元に今回の調理の殺菌レベルを計算してみましょう。
果たしてどれくらいの安全性が担保されているのでしょうか?
中心温度をモニタリングした鶏胸肉のデータから殺菌レベルを算出して安全性評価を行います。7D、12Dなど... 【Anova】鶏ハムのサルモネラ殺菌レベル/食中毒リスク算出 - Theory is the best sauce. |
Nick が真空調理で使っている道具たちを一部紹介しておきます。
個人的にはこれ一択。そのうち記事で書きますが、Wi-Fi が圧倒的に便利。外出先にいながら火入れのコントロールが可能。加熱を複数温度に分けて行うなどの場合、外出先から出来ないと不便過ぎる。
最適な加熱条件が分かっているなら、帰宅が遅れた場合に出先から加熱温度を下げて火入れの進行を遅らせる技も使える。
あとは、温度コントロールが命の商品なので、実績あるAnovaが一番安心できるという側面も。安物買って気づかないうちに温度センサー壊れてた→食中毒…とかシャレにならない…。
ワタナベ工業ポリ袋がいいと思います。ジップロックと比較して1枚あたり50%以上のコストダウンが図れます。野菜500gだって余裕で入る。
ただ、ワタナベ工業ポリ袋にはジッパーがないので、密閉時にはクリップイットを。ポリ袋をクリップイットで留めるだけで簡単に密閉できます。袋の真ん中らへんなど、好きな位置で止められるので便利です。
また、クリップイットは-20~140度の温度耐性があり、湯煎にかけたり冷凍庫に放り込んだりしても2年以上1つも壊れていません。かなり丈夫です。
Nick はワタナベ工業ポリ袋 & クリップイットのコンビに非常に広い応用路を見出しており、真空調理 / 通常調理問わず、使わない日はまずありません。(追って記事書きます。)迷ったら買うべし。後悔させない自信ある。
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