生海老はねっとりした食感と甘みが魅力的な一方で、生海老独特の臭みもあります。茶ぶりしてミキュイにすることで、生に近いねっとり感を保ったまま臭みを飛ばし、甘みを強調することができます!
ミキュイ(mie cuit)とは、”半生”の状態だと思えばOKです。タンパク質の変性温度をうまく読んで、身が固くならないように低温の加熱で柔らかい食感を作り出します。
注意点としては、魚介類はタンパク質の変性温度が牛や豚に比べて低いため、ミキュイを作る際の理想的な加熱温度は、細菌にとっても繁殖に理想的な温度であることです。
そのため、細菌リスクをいかに制御して調理するかがミキュイでは重要なポイントになります。この点も後でちゃんとフォローします。
※分かりやすさのために、トップ画像には頭付きの海老の写真を使っていますが、本当は殻含め全部外しておいた方が美味しく仕上がります。(後述)
Contents
最大のポイントは茶ぶり。真空調理で閉じ込めてしまう海老の生臭さを軽減して、甘みを際だたせます。お茶の柔らかい香りを海老に移す効果もあるので、ローストの弱いものを使ってください。ミキュイの懸念事項である細菌リスクの軽減にも有効!
海老は頭・脚・尻尾をもいで、殻を外す。竹串などで背ワタを抜く。
頭を外した時に出てくる臓物類は臭みの原因になるのでよく拭き取る。
残った海老の身を70~85度のはと麦茶で霜降りにする(茶ぶり)。臭みを取って海老に柔らかな香りを足すと同時に、表面殺菌の役割を果たす。
海老をポリ袋に移し、コンフィするのに十分な量のオリーブオイルを注ぎ足す。
Anova で40℃25分加熱する。加熱終了後、急冷して十分冷めたら完成。
海老は頭・脚・尻尾をもいで、殻を外す。竹串などで背ワタを抜く。
頭を外した時に出てくる臓物類は臭みの原因になるのでよく拭き取る。
残った海老の身を70~85度のはと麦茶で霜降りにする(茶ぶり)。臭みを取って海老に柔らかな香りを足すと同時に、表面殺菌の役割を果たす。
海老をポリ袋に移し、コンフィするのに十分な量のオリーブオイルを注ぎ足す。
Anova で40℃25分加熱する。加熱終了後、急冷して十分冷めたら完成。
鮮度の良い魚介類を生食できるのは、細菌の付着量がその最低発症菌数を下回るからです。この意味が分からない人は以下の記事を読んでおいてください。ミキュイという料理はタンパク質変性と最低発症菌数との戦いです。
「とりあえず加熱すれば安全」「冷蔵庫に入れれば...」「冷凍すれば...」と思っている人のための食中毒... 【予防以前】初めて学ぶ人のための食中毒の基礎の基礎 - Theory is the best sauce. |
リスク要素として懸念される細菌は、腸炎ビブリオと大腸菌です。それぞれ37℃付近で最も活発に分裂し、活性状態では、腸炎ビブリオは8分、大腸菌は20分で分裂します(細菌数が倍になる)。
よって、今回のミキュイの湯煎加熱過程では、単純に考えて、腸炎ビブリオは約8倍に、大腸菌は2倍強になります。
大腸菌の生菌数は加熱前後でほぼ変わらないので、以降は腸炎ビブリオの焦点を絞ります。また、汚染範囲は海老の表面のみと想定します。 1)細菌の内部侵入は起きていないと想定
海老の鮮度が良ければ(初期の生菌数が少ない)、細菌の多少の繁殖は許したところで問題ないでしょうが、一般消費者が手にする生食用の海老の鮮度はピンキリだと思うので、ここではやや慎重に考えます。
結論から言えば、茶ぶりに使うお茶の温度は、
という選択をひとまずオススメします。 2)ひとまず、と書いたのは熱伝導方程式で表面の温度変化を記述すれば、殺菌レベルの理論値も計算できるから。これはそのうちやろうと思っていますが、結構手がかかるし、今回のような瞬間的な熱応答をうまく記述できるか自信がない。「ひとまず」の気持ちはそんなところ。
85℃なら、瞬間的には海老の表面温度は75℃程度には到達します(その後、急速に温度低下していく。IR温度計で大雑把に測った)。この温度を0.2秒維持できれば、腸炎ビブリオを1/10に減らせるので、後の湯煎工程での増殖を差し引きしても 3)実際は、茶ぶりの加熱によって細菌の活性が落ちるので増殖スピードも鈍ると考えられる細菌数は加熱前後でほぼ変わらないかと思います。
他方で、70℃ではあんまり殺菌効果は無さそう。 4)後の湯煎加熱での増殖スピードを鈍らせる効果はあるかも理由は60℃での腸炎ビブリオのD-値は25秒くらいだから。25秒も60℃維持するのは茶ぶりでは絶対無理です。
要は、鮮度の良い海老を使ってくれ、ということです。笑
そうすれば、こんな面倒なこと考えなくて済むから。
D-値の知識なしに低温調理を行うことは、毒キノコの知識なしにキノコ狩りに行くようなものです。あなた... 【Anova】D値: 真空調理/低温調理の食中毒予防のための知識 - Theory is the best sauce. |
レシピ中の「ここなんで?」「こうしたらどうなるの?」のような疑問に一部答えます。
塩水処理(ウェットブライニング)しても生臭さは十分には抜けませんでした。茶ぶり推奨です。
そもそも、サーモンのときのは違って、加熱によってタンパク質が海老の表面に白くこびりつく現象は起きないので、ブライニングの必要性は薄いです。
ダメです。嘘だと思ったらやってみてください。後悔しますから。
殻が身からお茶を守ってしまい、茶ぶりの効果がうまく引き出せません。また、頭内部の臓物類は生臭さの素なので、絶対外しましょう。
対照実験してみたところ、70℃なら食感の変化は感知不可能でした。
85℃だと「少し分かるかな?」程度。そんなに気にすることないと思いますよ。
他のお茶でも大丈夫です。そもそもミキュイのときに茶ぶりを薦めてくれたSUMIKAの中の人は、ほうじ茶で茶ぶりしていました。はと麦茶は、ただの僕の好みです。笑
ハーブティー(レモングラスティーとか)でやっても面白いと思います。むしろチャレンジを推奨したいくらい。
サーモンのアクチン 5)食感を硬くするタンパク質は42℃くらいから変性を始めるので、サーモンミキュイを作るときは40℃くらいで湯煎します。今回はそれを単純に海老に対して適用して上手くいったので、40℃でレシピを書きました。
「25分」は、真空調理は以下の記事を根拠にしています。海老の厚みは大体20mmくらい、形状は円柱状なので、その場合の値を採用しています。
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Nick が真空調理で使っている道具たちを一部紹介しておきます。
個人的にはこれ一択。そのうち記事で書きますが、Wi-Fi が圧倒的に便利。外出先にいながら火入れのコントロールが可能。加熱を複数温度に分けて行うなどの場合、外出先から出来ないと不便過ぎる。
最適な加熱条件が分かっているなら、帰宅が遅れた場合に出先から加熱温度を下げて火入れの進行を遅らせる技も使える。
あとは、温度コントロールが命の商品なので、実績あるAnovaが一番安心できるという側面も。安物買って気づかないうちに温度センサー壊れてた→食中毒…とかシャレにならない…。
ワタナベ工業ポリ袋がいいと思います。ジップロックと比較して1枚あたり50%以上のコストダウンが図れます。野菜500gだって余裕で入る。
ただ、ワタナベ工業ポリ袋にはジッパーがないので、密閉時にはクリップイットを。ポリ袋をクリップイットで留めるだけで簡単に密閉できます。袋の真ん中らへんなど、好きな位置で止められるので便利です。
また、クリップイットは-20~140度の温度耐性があり、湯煎にかけたり冷凍庫に放り込んだりしても2年以上1つも壊れていません。かなり丈夫です。
Nick はワタナベ工業ポリ袋 & クリップイットのコンビに非常に広い応用路を見出しており、真空調理 / 通常調理問わず、使わない日はまずありません。(追って記事書きます。)迷ったら買うべし。後悔させない自信ある。
[ + ]
1. | ↑ click to get back. | 細菌の内部侵入は起きていないと想定 |
2. | ↑ click to get back. | ひとまず、と書いたのは熱伝導方程式で表面の温度変化を記述すれば、殺菌レベルの理論値も計算できるから。これはそのうちやろうと思っていますが、結構手がかかるし、今回のような瞬間的な熱応答をうまく記述できるか自信がない。「ひとまず」の気持ちはそんなところ。 |
3. | ↑ click to get back. | 実際は、茶ぶりの加熱によって細菌の活性が落ちるので増殖スピードも鈍ると考えられる |
4. | ↑ click to get back. | 後の湯煎加熱での増殖スピードを鈍らせる効果はあるかも |
5. | ↑ click to get back. | 食感を硬くするタンパク質 |