Categories: 真空調理料理

【Anova】家庭で役立つ真空調理/低温調理のススメ

2016年からAnovaを自宅で愛用するNickが、ホームシェフ目線で感じる真空調理のメリット・デメリットをまとめました。(2019/01/30加筆修正)

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真空調理とは

wikipedia の真空調理のページから重要なところだけ抜き出しますと、真空調理とは…

「焼く」「蒸す」「煮る」に次ぐ、第4の調理法と呼ばれる調理法。
真空パックなどで脱気・密閉した食材をスチームコンベクションオーブンや湯煎器で、加熱温度と時間を厳密にコントロールしながら行う調理方法のことをいう。

(1点補足:業務用ではスチームコンベクションオーブン、家庭ではanovaなどの湯煎器が用いられることが多い。)
この説明だけでは、具体的なイメージが持てないかと思いますので、youtubeのレビュー動画をご覧ください。
真空調理機Anovaのレビュー動画

真空調理がどんなものか、なんとなーく分かったところで、「この真空調理の何が嬉しいの?」という疑問に(業務視点ではなく)家庭向けの観点からお答えしましょう。

真空調理のメリット

1.恒温加熱効果

たとえば、恒温(54~64度)で肉を一定時間加熱すると、フライパンなどでは再現困難なほどジューシーで柔らかく仕上がります。

真空調理は、この恒温加熱を行うのに適した調理方法であり、多少の知識をインプットすれば、お肉のジューシーさを今までと比較にならないほど自由に操ることができるようになります。一世を風靡した鶏ハムなどがその典型例でしょう。

この効果はもちろん肉に対してだけでなく、低温殺菌、加熱による野菜の食感操作、酵素の反応促進など、細かな温度のコントロールが重要な局面で活用することができます。

2.袋を使うことによる密閉効果

真空調理では食材を袋に密閉した状態で調理します。そのため、「焼く」「煮る」などその他の調理方法に比べて、旨味や風味・栄養素・ビタミンなどが煮汁や油へと流出しづらく、食材に留めることができます。特に、煮込み料理などで顕著な違いが感じられます。

また、少ない調味液でも食材全体に味を行き渡らせることができ、食費の圧縮ができます。

3.(酸化・)二次汚染リスクの低下

袋内部の食材は(当然ながら)袋によって外部の細菌が侵入しづらい状態になっているため、調理完了後の扱いを間違えなければ、細菌の繁殖リスクが通常調理に比べて低くなります。

特に保存の話で言えば、加熱の済んだ食材をその袋ごと急冷することができるため、細菌の繁殖しやすい温度帯を素早く通過させてチルド室に移せることが顕著なメリットとして挙げられます。

結果として、調理した食品の保存期間を伸ばすことができ、週末の大量調理などの強い味方になります。

4.レシピの定量化・脱属人化

調理において、火入れの領域は経験と勘が幅を利かせている領域ですが、真空調理では、その火入れを加熱温度×時間という形で完全に定量化できます。

そのため、極めて再現性の高いレシピを書くことができます。他人の開発したレシピを(少なくとも真空調理パートについては)容易にコピーできます。

また、火入れが定量化されることによって、火入れ以外の要素が仕上がりに及ぼす影響を対照しやすく、調理への理解が深めることができるという点もあります。

5.調理作業の効率化

真空調理と他の調理は同時並行で進められます。真空調理の加熱工程は、anovaなどの専用機器に完全・安全に任せることができるため、加熱の間は他の品目の調理に時間を割くことができるためです。外出だってできます。

また、複数品目の真空調理も同時進行可能です。

たとえば、63度という温度であれば、鶏胸肉の加熱と温泉卵の調理が同時に可能ですし、80度で野菜のピュレを作るために野菜のペクチンを軟化させつつ、煮込み料理を仕込むことができます。

各食材は袋で密閉され、他の食材から遮断されているため、加熱温度さえ共通であれば複数の真空調理を容易に同時に行うことができます。結果的に、調理の効率が大幅に上がります。

真空調理のデメリット

1.加熱時間が長い

加熱温度が他の調理方法と比較して低いため、食材全体を加熱し切るまでに時間がかかります。実際の加熱時間は、食材の厚さ・表面積にもよりますが、加熱工程が30分以内に完了するレシピはかなり限られます。

実際、1時間以上の加熱を要するレシピが大半です。準備ゼロから急いで食事の準備をする必要がある時には、真空調理には頼らない方がよいでしょう。

誤解がないように念のため強調しておきますが、真空調理では、加熱を機械に任せることができるため、人間が調理に拘束される時間は決して長くはありません。10分の下処理、1時間の加熱というレシピの場合、人間が拘束されるのは下処理の10分だけです。

2. 水分を逃がせない

メリットとして挙げた密閉効果の裏返しとして、袋内の水分を外に逃がせません。そのため、水分を多く含む食材(野菜や肉)を真空調理すると袋内部に湿気がこもり、全体が水っぽい状態で仕上がります。

鶏ハムや煮込み、魚介のミキュイなど水分を食材側に留めたい料理では真空調理は強力な手段ですが、ロースト・コンフィなどの食材の水分を適度に落としたい加熱手段の代替としては上手く機能しません。 1)もっとも、蒸したり煮るだけのローストしないローストビーフという謎料理もあるのでそれを許容するなら真空調理ローストビーフもアリでしょうが…。

具体的には、食材から出た水分で食材自体が漬け込まれた状態が維持されてしまうため、水分(とそこに含まれる余計な香り)が過剰に食材側に残ります。その水分が邪魔をして食材の味を引き出せない場合が多々あります。いわば、食感は作れても味が作れないケースです。

また、(小売のお肉などによくあるように)品質や鮮度にやや疑問符が付く食材では、食材の悪い側面(たとえば香りや血っぽい雑味)を閉じ込めすぎる場合があります。

上記後者のような料理のために真空調理を使うなら、何らかの形で食材の水分量を調整する必要があります。

3.衛生管理の知識が必要

低温調理のメリットばかりが強調され、衛生面のリスクに言及されないことが多いですが、この点はとても大切です。

真空調理は、加熱温度が他の調理方法と比較して低いため、食中毒を引き起こす細菌を殺菌する速度も他の調理方法に比べて遅くなります。あるいは、そもそも殺菌に適さない温度を選んでしまうかもしれません。そのため、リスクの高い調理方法を(意図せず)選んでしまっていないか、自分で判断する必要があります。

たとえば、鶏肉(脂質12%)を調理する場合、全体を(フライパンなどではすぐに到達する)74度に加熱すれば、サルモネラ菌やカンピロバクターは瞬間殺菌され、通常摂取しても問題ないレベルまで鶏肉を減菌できますが、(真空調理でよくあるように)全体を60度に加熱した場合では、安全な水準まで減菌するのに60度を35分保つ必要があります([1]) 2)食の安全性は確率的な概念であって様々な基準があるため、ここに引用したものはその一例。唯一絶対の基準ではない。

では、54度の場合はどれくらいの時間が必要でしょうか?
58度だったら?
65度だったら?

この例から分かるように、真空調理の安全性を判断するには、一定の知識が必要です。そのような知識ない場合、真空調理は、他の調理方法と比べて、食中毒のリスクが高い調理法ということは絶対に理解しておくべきです。

すでに十分検証された信頼できるレシピに従うのであれば、加熱温度×時間はそのレシピ通りに行って問題ありません。しかし、自分で別の加熱パターンを考案して実験する時や、ネット上の個人(たとえば私)のレシピを試す場合は、自分自身でそのレシピに食中毒のリスクがないか判断するための知識が必要です。 3)炊飯器での低温調理レシピをはじめ、ネット上のレシピは怪しげなものが多くあります。

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参考

[1]Cooking for Geeks: Real Science, Great Cooks, and Good Food. 2nd edition. Jeff Potter. O’Reilly Media, 2015.
[2]真空調理ドットコム

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Nick が真空調理で使っている道具たちを一部紹介しておきます。

Anova

個人的にはこれ一択。そのうち記事で書きますが、Wi-Fi が圧倒的に便利。外出先にいながら火入れのコントロールが可能。加熱を複数温度に分けて行うなどの場合、外出先から出来ないと不便過ぎる。
最適な加熱条件が分かっているなら、帰宅が遅れた場合に出先から加熱温度を下げて火入れの進行を遅らせる技も使える。

あとは、温度コントロールが命の商品なので、実績あるAnovaが一番安心できるという側面も。安物買って気づかないうちに温度センサー壊れてた→食中毒…とかシャレにならない…。

ANOVA Precision Cooker – WIFI 2nd Gen (900 Watts)
Anova

ポリ袋

ワタナベ工業ポリ袋がいいと思います。ジップロックと比較して1枚あたり50%以上のコストダウンが図れます。野菜500gだって余裕で入る。

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Nick はこの袋を400枚まとめ買いしてますが(既に1000枚は使った笑)、お試ししたい人向けに、40枚セットのリンクも一番下に貼っておきます。

ただ、ワタナベ工業ポリ袋にはジッパーがないので、密閉時にはクリップイットを。ポリ袋をクリップイットで留めるだけで簡単に密閉できます。袋の真ん中らへんなど、好きな位置で止められるので便利です。

また、クリップイットは-20~140度の温度耐性があり、湯煎にかけたり冷凍庫に放り込んだりしても2年以上1つも壊れていません。かなり丈夫です。

Nick はワタナベ工業ポリ袋 & クリップイットのコンビに非常に広い応用路を見出しており、真空調理 / 通常調理問わず、使わない日はまずありません。(追って記事書きます。)迷ったら買うべし。後悔させない自信ある。

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2018/03/21時点: Amazon だと40枚セット販売、楽天だと40枚×2セット販売で少し割安となっています。(どちらも送料無料)
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   [ + ]

1. もっとも、蒸したり煮るだけのローストしないローストビーフという謎料理もあるのでそれを許容するなら真空調理ローストビーフもアリでしょうが…。
2. 食の安全性は確率的な概念であって様々な基準があるため、ここに引用したものはその一例。唯一絶対の基準ではない。
3. 炊飯器での低温調理レシピをはじめ、ネット上のレシピは怪しげなものが多くあります。
Nick

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Nick

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