有鉤嚢虫(ゆうこうのうちゅう, Cysticercus cellulosae)
有鉤条虫(Taenia solium)

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概要

ヒトに寄生する条虫の中で最も危険な種。その他の条虫との著しい違いは、ヒト自身が中間宿主となり得ることである。すなわち、ヒト小腸内の成虫が生んだ卵から孵化した幼生が他の部位に移動して嚢虫となり得る。(有鉤嚢虫症)
代表的なヒトへの感染は、処理の不十分な豚肉を経由することだが、虫卵の付着した食材を経由してヒトからヒトへの感染することもある。

寄生場所

豚・イノシシなどの筋肉。
羊・鹿・犬・猫・鼠・牛・熊・ヒトにも寄生することがある。
有鉤嚢虫症の場合、寄生箇所としては多い順に
皮下結合組織・眼・脳・筋肉・心臓・肝臓となる。

感染経路・症状

典型的には、死滅していない幼生を摂取することで感染する。既にヒトの小腸内に成虫がいる場合、体内で孵化した幼生が他の部位に移動して嚢虫となる場合がある(有鉤嚢虫症)。
なお、虫卵を直接摂取しても感染する。そのため、虫卵の付着した食材を経由してヒトからヒトへの感染することもある。
有鉤嚢虫症の症状は、寄生部位に依存するためここでは割愛。

予防方法

・適切な温度処理のされていない、汚染リスクのある豚肉などの摂取を避ける。
・流行地(公衆衛生水準の低い発展途上国に多い)では、生水・生野菜の摂取を避ける。感染の多い地域としては、メキシコ・南アメリカ・サハラ以南のアフリカ・インド、中国など東アジア・インドネシアのイリアン・ジャヤ州、パプア州・パプアニューギニアなど。
・嚢虫の死滅に必要な加熱・冷凍基準は以下の通り:
60度の加熱([3])
56度の加熱([4, pp4])
-5度×4日
-15度×3日
-24度×1日(以上[2])

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参考文献

[1]Foundations of Parasitology, 9th edition, Larry Roberts, John Janovy Jr., Steve Nadler, McGraw-Hill Education 2012.
[2]東京都福祉保健局
[3]Pathogen Safety Data Sheets: Infectious Substances – Taenia solium, Government of Canada.
[4]Taenia Infections. the Center for Food Security & Public Health, Institute for International Cooperation in Animal Biologics, 2005.


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