旋毛虫(Trichinella)

世界中に広く分布する寄生虫である旋毛虫について、食中毒の観点から情報を整理しました。特に、ジビエを食べる人はご注意を。

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概要

トリヒナ症の原因となる寄生虫。肉食・雑食の哺乳類の小腸や筋肉中に寄生し、筋肉中のシストを経口摂取することで新たな宿主に寄生する。大量に摂取すると重篤化する。全世界での年間感染率は1万人と推定される。幸いにも、ジビエを除き国産食品からの旋毛虫は発見されていない。

寄生場所

成虫は小腸に寄生し、新たな宿主に寄生する能力を持つ幼虫はシスト(幼虫がくるまっているコラーゲンのカプセル)形態で筋肉中に存在する。この幼虫のことを筋肉トリヒナと呼ぶ。

感染の恐れのある生物としては、ブタ、クマ、イヌ、キツネ、ウマ、アザラシ、セイウチなど。

感染経路

まず経口摂取された筋肉トリヒナが小腸に達すると、30時間以内に成虫となる。成虫同士は交尾・出産後に死滅するが、卵から孵った幼虫が循環器系を通じて全身に運ばれ、主に筋肉中に寄生し、新たな筋肉トリヒナとなり、シストにくるまれる。この状態での寿命は豚で11年、人では25年に達することもある。

症状

摂取した筋肉トリヒナの量および、幼虫が寄生した筋肉部位によって症状の重度が異なる。少量摂取であれば無症状であることが多いと考えられるが、トリヒナ症が心臓に影響を及ぼす場合、心不全や心筋炎を起こして死亡する場合もある。致死率は、0.2%と推定される。

予防方法

・感染の可能性のある食肉を生食しないこと。
・加熱によって、筋肉トリヒナの感染能力を不活性化させること。

[2]によれば、下記条件の加熱で食肉中のシストは死滅する。
・49度×6時間
・55度×6分
・60度×2分

これと同一の加熱条件が[3]において採用されている。

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参考文献

[1]横浜市衛生研究所
[2]Trichinella spiralis: Effect of high temperature on infectivity in pork. A.W. Kotula, K.D. Murrell, L.Acosta-Stein, L. Lamb, L.Douglass. Experimental Parasitology Volume 56, Issue 1, August 1983, Pages 15-19.
[3]National pork Board. Pork Safety Fact Sheet: Trichinella.


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