牛・豚などの筋肉中に寄生する寄生虫、住肉胞子虫(Sarcocystis)について、予防方法をまとめました。
住肉胞子虫は多様な種類が知られており、[7]にリストがある。
スポンサーリンク概要
草食動物の筋肉中に寄生し、その捕食者である肉食動物を終宿主とする寄生虫。毒性のタンパク質を持ち、摂取すると嘔吐などの症状を引き起こす。サルコシスティス自体はヒトの体内では短期間で死滅する。国内の牛肉も感染の恐れあり。
寄生場所
中間宿主の筋肉中にシスト1)虫体を包むコラーゲンのカプセルとして存在する。これが終宿主に摂取されると腸管で繁殖し、スポロシスト2)寄生虫の”素”が糞便とともに排出される。これを中間宿主の草食動物が摂取することで再び筋肉中に寄生する。
感染経路・症状
ヒトへの感染は、中間宿主の筋肉中に存在するシストに含まれる毒性タンパク質を摂取することで起こる。症状は一過性の嘔吐・下痢などの消化器症状。潜伏期間は1~20時間。
予防方法
冷凍や加熱による。
馬を中間宿主、犬を終宿主とするSarcocystis fayeriの場合、
・-20度48時間
・-30度36時間
・-40度18時間
の冷凍処理で有効に不活性化される([3])
牛を中間宿主、犬を終宿主とするSarcocystis cruziの場合、
・40度17時間
・60度5分
・100度2分
・-20度1時間半
・-10度1時間半
・-5度17時間
の処理が有効([4], シストを犬に摂取させても不感染)
豚を中間宿主、犬を終宿主とするSarcocystis miescherianaの場合、
・60度20分
・70度15分
・100度5分
・-4度48時間
・-20度24時間
の処理が有効([5], シストを犬に摂取させても不感染)
なお、Sarcocystis fusiformis(バッファロー→猫に感染), Sarcocystis gigantea(羊→猫), Sarcocystis levinei(バッファロー→犬)のシスト不活性化条件についての記載が[6]にあり、50度15分、52.5度10分で不活性化されない例が指摘されている。
国内の汚染実態
[1]によれば、岐阜県の牛肉の調査において、肥育牛の32.3~53.6%にSarcocystis cruzi3)馬肉の食中毒で知られるSarcocystis fayeriと同じ毒性タンパク質を持つ感染が確認された。4)肉片内のシストを実確認牛食肉からの住肉胞子虫食中毒の発生可能性が示唆されている。
スポンサーリンク参考文献
[1]岐阜県における牛の住肉胞子虫侵淫度調査. 松尾加代子, 佐藤宏. IASR Vol. 33 p. 160-161: 2012年6月号.
[4]Effects of temperature on viability of sarcocysts of Sarcocystis cruzi in cardiac muscle of cattle. Noh, J.W. Jang, D.H. (Seoul National Univ., Suwon (Korea R.)) Kang, Y.B. Jang, H. et al. 1988.(korean literature)
[5]Effect of temperature on the infectivity of Sarcocystis miescheriana cysts in pork. Saleque A., Juyal PD., Bhatia BB. Vet Parasitol. 1990 Jul;36(3-4):343-6.
[6]The Effect Of Freezing And Heating On The Infectivity Of Sarcocystis fusiformis To Cats and Evaluation Of ELISA For Its Diagnosis In Water Buffaloes (Bubalus bubalis). El-Kelesh, E.A.M., Abdel- Maogood, S. Z., Abdel-wahab, A.M., Radwan, I.G.H. and Ibrahim, O. Journal of American Science, 2011;7(7).
1. | ↑ click to get back. | 虫体を包むコラーゲンのカプセル |
2. | ↑ click to get back. | 寄生虫の”素” |
3. | ↑ click to get back. | 馬肉の食中毒で知られるSarcocystis fayeriと同じ毒性タンパク質を持つ |
4. | ↑ click to get back. | 肉片内のシストを実確認 |