腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)
海水中に存在して魚に付着する腸炎ビブリオについて、食中毒予防の観点から情報をまとめました。また、低温調理/真空調理をする人に向けて詳細な死滅温度(D-値)も紹介します。
スポンサーリンク概要
海水中に広く存在する。日本では、サルモネラと並んで発生件数の多い食中毒原因菌。7〜9月に多発する。好塩性で真水(水道水)中では増殖しないが、増殖速度は速い。
熱に弱く、加熱処理で死滅する。
生育条件
発育温度:4~45.3
生育最低水分活性:0.94
ph:4.8~11
塩分濃度上限:10%
至適条件下では8~9分に1回分裂する。
この場合、1個の腸炎ビブリオが2時間13分~2時間半で10万個(発症菌数)に増殖する。
D-値(7D-reduction)
[1]
52度:1.6分(11分12秒)
[2]
52度:47秒(5分30秒)
55度:15秒(1分45秒)
D-値が初耳の人はこちらをどうぞ。
汚染経路
海水中に存在するため、海産物に付着する。
症状
8~24時間の潜伏期間後、激しい腹痛や下痢を起こす。
食中毒発生のメカニズム
経口摂取した腸炎ビブリオ菌が小腸に感染することで発生する。多くの場合は、腸炎ビブリオが排出する溶血毒と呼ばれる毒素が腸管に作用することで下痢などを引き起こす。
最小発症菌数
10万
食中毒予防策
・魚介類は、調理前に流水(水道水)で洗って菌を洗い流す
・魚介類に使った調理器具類を洗浄・消毒して二次汚染を防ぐ
・加熱調理をする場合は、上記の加熱を行うこと
参考文献
[1]食品微生物の科学 – 食品微生物<1>基礎編, 清水湖.
[2]黄色ブドウ球菌ならびに腸炎ビブリオのD値に関する研究(平成16年度病原微生物データ分析実験作業成果報告書), 東海大学
小沼博隆.
[3]食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書, 17.腸炎ビブリオ, 社団法人畜産技術協会
[4]国立感染症研究所
[5]東京都福祉保健局
[6]Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food: Draft Guidance for Industry. U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Food Safety and Applied Nutrition, 2016.