100gのHEV陽性の豚肉を食べることでHEVに感染する確率を荒く推定しました。豚肉の低温調理における食中毒リスクを見積もる上で、参考情報として利用してください。

スポンサーリンク


推定の方針

HEVの年間感染人口と、1年間に生産されるHEV陽性の豚肉の比を考え、単位量あたりのHEV陽性豚肉がどれくらいのHEV感染者を生み出しているかを大雑把に計算する。計算にあたって必要な数値は既存の統計から推定する。

ただし、上述ような計算方法では、生肉段階ではHEV陽性であっても適切に調理されて喫食前にはHEVが非活性化されている豚肉も一括りに”HEV陽性”と扱っている。そのため、目的の確率を過小評価することになる。この点も荒くであるが、修正した値を最後に示す。

結論

HEV陽性の豚肉100gを食べたときに、実際にHEVに感染する推定確率は約24~77%。
HEV感染が不明な豚肉100gを食べたときにHEVに感染する推定確率は約0.2~0.7%。
ただし、以下を想定する。1)細かいことを言えば、他にも多くを想定していますが、主要なものはこの2つです。
・HEV陽性の肉のうち、70~90%は適切に調理されて、喫食前には非活性化されている。2)70~90%という数字は私の勘です。必要に応じて変更してください。
・HEV感染陽性の豚の食肉部にはHEVが存在してヒトへの感染源となる。3)この点について疫学的確証はないようですが、そのように疑われています。[3]
・日本におけるHEV感染事例は全て豚肉由来とする。4)感染源の切り分けが困難であるため、計算を単純化する目的でこのように仮定します。

計算

感染者サイドの推定

HEV年間感染率: \(r_{H} = 0.0044 \) 5)関東甲信越の感染率[1]を全国の推定値として採用。
日本人口(人): \( N_{0} = 1.27 \times 10^8\)
年間感染人口(人): \(N_{H} = r_{H} \times N_{0} = 5.588 \times 10^5 \)

HEV陽性豚サイドの推定

豚肉国内生産量(g): \(N_{\text{pork}} = 8.94 \times 10^{11} \)
ロス率: \(r_{\text{loss}} = 0.03 \,\text{~}\, 0.1 \)
実食量(g): \( c_{0} = (1- r_{\text{loss}}) \times N_{\text{pork}} = 8.046 \times 10^{10} \,\text{~}\, 8.672 \times 10^{10} \)
HEV陽性豚肉割合: \( r_{\text{hev pork}} = 0.009 \) 6)熊本県の屠畜場におけるデータ[2]を流用。
実食量のうちHEV陽性のもの(g): \(c_{H} = c_{0} \times r_{\text{hev pork}} = 7.24 \times 10^8 \,\text{~}\, 7.8\times 10^8 \)

感染率推定

HEV感染者 / HEV陽性豚肉: \( r_{\text{infection}} = N_{H} / c_{H} = 7.16 \times 10^{-4} \,\text{~}\, 7.7 \times 10^{-4} \)
100gのHEV陽性豚肉あたりのHEV感染者: \( 100 \times r_{\text{infection}} = 7.16 \times 10^{-2} \,\text{~}\, 7.7 \times 10^{-2} \)

加熱調理による非活性化の補正

HEV陽性の肉のうち、70~90%は適切に調理されて、喫食前には非活性化されていると想定する. すなわち、\(c_{H}\) の代わりに\(c_{H}\) を0.1~0.3倍したもの\( c_{H}^{\ast} \)を計算に用いる。この場合、\( r_{\text{infection}}^{\ast} = N_{H} / c_{H}^{\ast} = 0.239 \,\text{~}\, 0.77\)

スポンサーリンク


参考文献

[1]東京地域におけるHEV感染実態調査. 日本赤十字社.
[2]イノシシ, シカおよびブタのE型肝炎ウイルス感染状況調査 – 熊本県. 病原微生物検出情報 Vol.35 No.1(No.407) 2014年1月. pp 9-10.
[3]最近のE型肝炎の増加について. IASR Vol. 37 p. 134-136: 2016年7月号


   [ + ]

1.細かいことを言えば、他にも多くを想定していますが、主要なものはこの2つです。
2.70~90%という数字は私の勘です。必要に応じて変更してください。
3.この点について疫学的確証はないようですが、そのように疑われています。[3]
4.感染源の切り分けが困難であるため、計算を単純化する目的でこのように仮定します。
5.関東甲信越の感染率[1]を全国の推定値として採用。
6.熊本県の屠畜場におけるデータ[2]を流用。
スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です